1 はじめ世界は無であった。
2 唯一神たるアーは預言の言葉をもちて、無の中に現れ出でられた。
唯一神たるアーは力ある言葉をもちて、そこに光を創られ、又、無と光の間に闇を呼び寄せられた。
唯一神たるアーは自らの助けとなるようにアルカエウスを創られ、アルカエウスに仕えるものとしてアルカイを創られた。
3
唯一神たるアーは地上を創られた。そこは荒涼とした、何もない大地であった。
唯一神たるアーは力ある言葉をもちてアルカエウスに命じた。
「見よ。わたしは地上を創った。しかし、その上のものは何も未だ創られていない」
4
アルカエウスは答えた。
「唯一神たるアーよ、あなたは地上を創られました。その上のものを我々が創りましょう」
5 こうしてアルカエウスはアーの御許を離れ、地上の上に留まった。
アルカエウスの光は地上を照らし、彼らは星となり、月となり、また太陽となり、我々の見る天空のすべてとなった。
6 アルカエウスは言葉をもちて、彼らの間で話し合った。
「見よ、天空と大地はすでに分けられた。しかし、大地の上にはまだ何もない。アルカイを送り、大地の上にあるものを創らせよう」
7 こうしてアルカイは大地に降り、現在我らの目にするものすべてを創った。
アルカイは大地を豊かに満たすために唯一神たるアーやアルカエウスと同じ言葉と創造の力を与えられていたが、自らのためにその力を用いることは禁じられていた。
1 時がたち、地上は豊かに満ち溢れた。
2 アルカイは彼らの間で言った。
「大地の上は豊かになった。しかし、大地の中には何も創られていない。我々は地の底へ降り、そこに何があるか見てこよう」
3
こうして、アルカイは大地の中をも豊かに満たすべく、地の底へ降りた。
そこには闇があり、その向こうに無があった。
4
アルカイは彼らの間で言った。
「見よ、ここには何もない。我々はここを満たすものを創ろう」
5
アルカイが話している間に、彼らの心を闇が覆った。そこは無であり、唯一神たるアーの創造された光の届かない場所だったからである。
6
アルカイは彼らの間で言った。
「見よ、ここにはアルカエウスの目は届かない。ここに、我々のための美しいものを創り、大地の下をそれで満たそう」
7 こうしてアルカイは、地の底に彼らの目に美しく、彼らのために快いものを創った。
そこはアルカエウスの見ていない所だったからである。
1 アルカエウスは地上を見下ろし、アルカイが自らのために創った美しいもので身を飾っているのを見、彼らが自らのために力を用いたことを知った。
2
アルカエウスは、アルカイのなした事を唯一神たるアーに告げた。
3
唯一神たるアーは激しく憤り、こう言われた。
「彼らはわたしの禁じていたことを行った。わたしは彼らから言葉を取り上げ、創造の力も取り上げる。」
4
そうして唯一神たるアーは地上から目を背けられた。多くのアルカエウスもそれに従った。
5
残ったアルカエウスはそれを見て深く哀しみ、言葉をもちて、彼らの間で話し合った。
「見よ、地上を。これは我々の過ちだ。行って、彼らを諌め、唯一なるお方に彼らをとりなそう。」
6
こうして、アルカエウスのうち22人が、アルカイを諌めるために地上に降りられた。
1 その頃、言葉と創造の力を失ったアルカイは、みな散り散りになっていた。
闇は彼らを縛る鎖となって大地とアルカイと、そしてアルカイの創ったものを深く捕らえていた。
2
地上に降りたアルカエウスたちは、おのおのの言葉を持ちてアルカイに語りかけた。
「唯一神たるアーはお前達の犯した罪を深く憤り、その顔を背けられた。
罪を悔いているものは、我々の前に進み出なさい。
闇と戦い、闇と地上をその元いたところに戻すのです。」
3
アルカイは、自らの罪を知り、恐れおののいて更に深く闇に身を沈めた。
4
残ったアルカイは、自らアルカエウスたちの前に進み出た。
アルカエウスたちは彼らに、大地に闇をもたらした贖罪として、闇と戦うことを命じられた。
5 自らの罪を知ったアルカイは、アルカエウスと共に闇と戦った。
1 アルカエウスの一人は、アルカイが言葉も持たず、創造の力も持たず、闇との戦いに倒れていくのを嘆き、こう言われた。
「わたしはあらゆるアルカイの雛形として唯一神たるアーに創られた。
それゆえ、わたしの中にはあらゆるアルカイの姿が存在する。
それを使って闇と戦うことのできるものを、彼らのために創り、彼らの助けとしよう。」
2
こうしてアルカエウスの一人は、創造の力を持ちて、もう一人の自分を創ろうとした。
その時、闇の鎖がその使徒を捕らえた。
3
創造の力は、唯一神たるアーのためにのみ使うことを許された力だったからである。
4
こうしてアルカエウスの一人が、闇の鎖に縛られた。
5
ある一人のアルカエウスはそれを見て、闇の鎖に縛られたアルカエウスを助けようと手を差し伸べ、自らに闇の鎖を巻きつけ、粉々に砕かれてしまった。
6
アルカエウスを砕いた闇の鎖は更に力を増し、やがて次々と他のアルカエウス達も闇の鎖に砕かれた。
この出来事は大皆触と呼ばれた。
7
最後に残られたのは、唯一神たるアーの娘であった。唯一神たるアーの娘であり、すべてのアルカエウスの中でもっとも唯一神たるアーに愛されたものであった。
1唯一神たるアーの娘は、自らの手に闇の鎖を取り、こう言われた。
「2 闇の鎖は、我々をさえ縛り上げ、粉々にしてしまった。もはや闇と戦うことのできるものはわたししか残っていない。
3 そこで、わたしは砕かれたアルカエウスを、アルカイたちに与える。
砕かれたアルカエウスは、アルカイたちに宿り、闇と共に戦う力となろう。
4 わたしは地上に降り、アルカイたちと共に闇と戦おう。
そして、見よ、わたしは自らをこの鎖で打ち据える。しかし、わたしはこの鎖に砕かれることはない。
5 これが闇の鎖に、我々が打ち勝つ証となる。」
7 こういって、唯一神たるアーの娘は闇の鎖で自らを打ち据えられたので、砕けたその身体が地上に散った。
闇の鎖は唯一神たるアーの娘を傷つける事はできたが、縛り上げることも粉々に砕くこともできなかった。
8 しかし、唯一神たるアーの娘は深い傷を受けたため、地上に下り、傷を癒すためそこで長く眠りについた。
1 かくて、アルカイはその身のうちに闇たる闇の鎖と、光たるアルカエウスの両方を宿すこととなった。
2 二つの相反するものを宿したアルカイは、もはやアルカエウスに創られたものとは異なったものとなった。
3 アルカエウスの欠片は、アルカイたちに言葉と創造の一部をもたらした。
しかし、闇の鎖は、アルカイたちに闇への絶えなる誘惑をもたらした。
4 かくて、地上に人が生まれ、かくのごとく世界が整えられたのである。
5 いとも偉大なる唯一神に栄えあれ。あらゆるものがあなたの御名と預言によりて成し遂げられますように。
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