花ではなく、剣をください

 

  剣をください。
  この手に剣を。
 
  剣は折れて、既に地に転がり。
  自身は惨めにも地にはいつくばり、母を呼んで涙するだけ。
 
  惨めで、無力な己の前に立ちはだかったのは、作られた命の彼。
  杖を振り上げ、一瞬振り返ると優しくわたしに笑って見せた。
 
  その笑みのまま、短い呪文を唱えれば、彼の身体は千々の光に砕け、今までわたしを脅かしていた闇も又、その光に貫かれて黄昏の光に消えゆき。

 

  ああ。
  わたしはそれらすべてを、呆然と見ることしかできなかった。
 
  だからもし、神よ。
 
  あなたがわたしに与えてくれる物があるのだとするならば。
 
 
  剣をください。
 
  わたしは彼の、小さくささやかな微笑みを守りたいから。
 
  何にも砕けることのない剣をわたしにください。
  世界のすべてをこの背に負って、くじけることがないように。
 
 
  今一度倒れ伏したなら、この身が地に伏すその前に、わたし自身の胸を貫く剣を、わたしにください。


2007.4.10up

ArehhaTop inserted by FC2 system