剣をください。
この手に剣を。
剣は折れて、既に地に転がり。
自身は惨めにも地にはいつくばり、母を呼んで涙するだけ。
惨めで、無力な己の前に立ちはだかったのは、作られた命の彼。
杖を振り上げ、一瞬振り返ると優しくわたしに笑って見せた。
その笑みのまま、短い呪文を唱えれば、彼の身体は千々の光に砕け、今までわたしを脅かしていた闇も又、その光に貫かれて黄昏の光に消えゆき。
ああ。
わたしはそれらすべてを、呆然と見ることしかできなかった。
だからもし、神よ。
あなたがわたしに与えてくれる物があるのだとするならば。
剣をください。
わたしは彼の、小さくささやかな微笑みを守りたいから。
何にも砕けることのない剣をわたしにください。
世界のすべてをこの背に負って、くじけることがないように。
今一度倒れ伏したなら、この身が地に伏すその前に、わたし自身の胸を貫く剣を、わたしにください。